約30年前、ワンガリ・マータイがケニアに7本の木を植えたことが、グリーンベルト運動の発端となった。それ以来、多くの人々(ほとんどが女性)がケニア中に3000万本以上の木を植え、その運動をアフリカにある他のたくさんの国と共有してきた。2004年、マータイはノーベル平和賞を受賞した初めてのアフリカ人女性となった。
マータイ教授は2005年2月に日本を訪れ、モッタイナイの概念について学んだ。彼女はそれが世界への重要なメッセージになり得ると考えた。彼女はモッタイナイの精神的な意味が気に入ったのだ。他に彼女が気に入ったのが、長年グリーンベルト運動のスローガンであった3Rの考えを、この1語が表現していることであった。3Rは私たちに、使うものを「削減(Reduce)」し、可能なもの全てを「再利用(reuse)」し、再利用できないものは「リサイクル(recycle)」するように教えている。マータイ教授は、私たちみんなが依存している生態系の深刻な問題に対処し、それを守るために私たちがしなければならないことを伝えなければならないと考えた。
モッタイナイは2つの日本語の単語から成っている。モッタイは物体を意味し、ナイは「~でない」や「存在しない」を意味する。もともとモッタイナイという言葉は、ある物体が無くなってしまったことを意味した。モッタイには他にも、何か偉大なものや重要なもの、という意味もある。したがって、モッタイナイとは何か重要なものを無くす行為であり、その言葉は私たちが何かを最大限に活用できなかった時に使われる。
しかしとりわけ、モッタイナイという言葉は永遠に失われたものへの深い後悔を表す。存在する全てのものは、誰かの熱心な仕事やそれにかけられた時間の結果であり、その歴史を有しているのである。モッタイナイという言葉は、その歴史に対する受け取る人の側の正しい理解(感謝)を表しているのだ。それでモッタイナイは、モノを無駄にする時の使う人の罪の意識を反映しているのである。
マータイ教授は「モッタイナイは生活の中で良いものを放棄することではない。良いものを無駄にしないことというよりは、それは本当に、それらを丁寧に使うことなのだ。未来の世代も含め、世界にはそれらの資源を自分たちも使いたいという人がたくさんいるということを、覚えておかなければならない。」と述べている。
買ったばかりの缶ジュースを偶然こぼしてしまったとしたら、まずはそれをこぼしてしまったことが愚かだと感じるだろう。しかし次に、それを買うためのお金を得るためにどれだけ頑張って働いたかを考え始め、最終的には不注意すぎたことに怒ってしまう。
表面的には、モッタイナイは物質的損失を経験した時に感じられる感情である。しかし一方で、それは日本人の、生活や世界に対する精神的な見方も示しているのだ。失ったものはどうやって作られたのか。この時点に到達するまでどれだけかかったのか。それに何人の人が従事したのか。それに何時間が費やされたのか。この物体の陰にある物語は何か。全ての有形物は、日本人にとっては尊くかけがえのない、非物質的な物語を有しているのだ。
マータイ教授は、モッタイナイを3Rのような世界的運動にしようとする時、もうひとつのR、つまり「Repair」を加えたいと思っていると言う。削減し、再利用し、リサイクルし、修理することで、私たちは資源を最大限利用できるのだ、と彼女は言う。
さて、マータイ教授がモッタイナイの考え方について話すのを聞こう。
「ハチドリの物語をお話しします。ある日、森にいた動物たちは突然、大きな森林火災が起きているのを発見しました。彼らは集まって何が出来るか話し合い、何も出来ないことに気がつきました。しかし、小さなハチドリは火と戦うことに決めました。ハチドリは川との間を往復して飛び、その小さなくちばしに水をいくらか入れて運んで火を消そうとしました。他の動物たちは笑い、時間を無駄遣いしているとハチドリに言いました。しかし小さなハチドリは諦めませんでした。ハチドリは他の動物たちに『いずれにしても、私は私の出来ることをやる』と言いました。」
この物語は私たちに何の教訓を教えるのだろうか。マータイ教授が言わなければならないことは以下の通りである。
「私たちの非常に多くは、環境汚染や貧困、生態系の崩壊といった、直面している問題に圧倒されてしまっているので、これは素晴らしい物語だと思いました。しかし私たちはあのハチドリの姿勢に励まされ、地球を修復するため、「平和」を植えるために出来ることをしようとすべきなのです。私は一人が影響を及ぼすことが出来ると信じています!」
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