それは文字通り、不意にやってきた。それはハロウィンの金曜日の朝だった。
兆候は一切無かった。水は透き通っていて穏やかだったのだ。私はとてもリラックスしていた。波は小さく、右手はボードの先端に、左手は冷たい水の中に入れて、私は波と一緒に進んでいった。私は「打ち寄せる波がすぐ強くなればいいのに」と考えていたのを覚えているが、突然灰色の閃光があったのはまさにその時だった。
それは数秒のうちに終わった。私は、周囲の水が自分の血で明るい赤に染まっていくのを見たのを覚えている。そして私は、自分の腕がほとんど肩のところまで消えているのを見た。
友人のアラナが言うには、私の反応は非常に無味乾燥とした、抑制されたものだった。私はただ、幾分大きな、しかしうろたえていない声で、「たった今サメに襲われたわ」とだけ言い、片腕だけで漕ぎ去り始めたのだった。岸が遠いことは知っていたが、ひとつの考えがずっと頭の中で繰り返されていた。「浜辺に着くんだ。浜辺に着くんだ。」
私が病院に連れて行かれた時、医師のロビンスキー先生は、私が「キュウリと同じくらい落ち着いていた」と言った。みんなが私を助けてくれる病院に自分がいることを知って、私はとても安心したのを覚えている。ここまで辿り着いたのだ。私はこれを乗り切るつもりでいた。血をほぼ半分失ったため、到着した時私は起きていたがやや眠かった。
ロビンスキー先生は、「君は腕を失ったよ、ベサニー。こうなると焦点は、君の命を救うことにある。」と静かに言った。
彼によると、サメの口は非常に汚いため、サメによるかみ傷は感染症の危険性が高いようだ。そのため、彼は傷を綺麗にし、感染がないことを確かめるために数日間傷を開いたままにしておく必要があったのだ。その後、私は傷を閉じるためにもう一度手術を受けることになっていた。
手術を終えて私が意識を取り戻した時、私は「全てが上手くいく」というような笑みを顔に浮かべていた、と父は言った。私がまず知りたかったことは、「いつまたサーフィン出来るか?」ということだったのだ。
一番好きなことをもう二度と出来なくなるかも知れない、というのを想像して欲しい。どう感じる?悲しい?怒る?ショックを受ける?その答えは、私にとってはこれら全てだったのだ。
病院で私は、かつて腕があったところを眺めては、「これからどうすればいいの?」と考えたものだった。しばらくの間、私はこれからもまたサーフィンするようになるとは思っていなかった。「ほら、これで満足でしょう。つまり、サーフィンが全てじゃないでしょ?」と私は自分に言い聞かせようとしたのだ。もし私が直接サーフィンに関われないならば、それがそのスポーツに近いところにいられる唯一の方法だろうと思ったので、私は父にサーフィンフォトグラファー(写真家)になりたいと言った。
しかし退院前には、――実際には1週間の入院の2日目にはもう――、 またサーフィン出来る可能性について私は違うことを話していた。家族全員が私を後押しし、出来る限り励まそうとしてくれたのだ。
いくらか縫合線があり、医者は完治するまでは水を避けるようにと私に言った。私は自分自身に期限を設けた。感謝祭だ。
感謝祭の前日、私は浜辺に下りてただ海を眺めようと決めた…のだが、もちろんそれだけで我慢出来るわけがなかった。水、風…全てがあまりに美しかったのだ。
最初2,3回試したのは上手くいかなかった。起き上がれなかったのである。私と一緒に水の中にいた父は、「ベサニー、もう1回やってみろ。今度は上手くいくぞ!」と叫び続けていた。だから私は何度も挑戦した。
すぐ後に、それは起きた。波が進んできて、私がそれを捕らえ、押し上げるために手をボードの上に置き、そして私は立っていた。
立ち上がり、(サメの)襲撃後初めて波に乗って感じた喜びは、私には言葉で言い表すのが難しい。私がしてほしくないのは、みんなが私を哀れむことだ。「もし人生がレモンを手渡してきたなら、レモネードを作りなさい」と母はいつも言っている。これは素晴らしい人生観だ。
私はよく、サメの事件全てがただの悪夢だったらいいのにと願う。しかしそうではなかった。それは私の今の現実であり、それを受け入れることを私は学んだ。次へ進んだのだ!
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